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No.2057 2022.1.5





車載用ACインバーター比較 正弦波出力 2021冬 構造編






□ 1.修正正弦波と正弦波出力

前回 No.2054 車載用ACインバーター比較 2021冬 構造編1 では、修正正弦波のインバーターを扱いました。今回は正弦波出力のインバーターを比較してみます。修正正弦波 は、簡単なスイッチングで制御するため原価が安く済みますが、矩形波出力となるため機器によっては正常に動作しなかったり、高調波成分を持つため機器の劣化が促進する可能性があります。正弦波出力は、家庭用コンセントと同じ言葉通りのSin波出力となりますが、回路が複雑化して部品原価が高くなり、重量が重くなるデメリットがあります。




□ 2.比較機種一覧

ランキング上位機種、色々な機種を展開しているメーカーの良さそうだと思った物、国内メーカーで良さそうな物を選定しました。出力は120W以上可能で、6000〜7000円で買えるものを対象としました。

※ランキングは、2021.12.27時点
No製品名W数Amazon
ランキング
Amazon
取扱開始日
ケースの材質
@ GIANDEL PS-300B 300W105位2019/5/15金属
A BESTEK MRZ3010HU 300W41位2016/12/12プラ
B LST 300W 300W52位2021/8/9プラ


@GIANDEL
PS-300B
ABESTEK
MRZ3010HU
BLST 300W



□ 3.負荷テスト

テスト結果は、レポート No.2056 車載用ACインバーター比較 正弦波出力 2021冬 実力編 を参照してください。


□ 4.構造確認

それぞれ確認した結果は、以下の通りです。
GIANDEL PS-300Bは、台湾か日本メーカーが絡んでいるのか丁寧に作られています。中身は良いのですが、ラベルやケースのデザインが少し残念です。
BESTEK MRZ3010HUは、使用している回路素子や基板レイアウトに懸念があります。設計段階で平滑化もしくはノイズ処理がうまくいかなかったようです。出力波形も汚いです。
LST 300Wは強引な基板レイアウトに大きな懸念があります。

@GIANDEL PS-300B
ABESTEK MRZ3010HU
BLST 300W



@ GIANDEL PS-300B


外観です。金属ケースです。昔ながらのインバーターといった外観です。

AC100VコネクタとUSBポート(5V出力)です。

冷却ファンの通風口とヒューズです。ヒューズにはカバーがネジ留めされているキチンとした作りです。

基板です。下側4つのFETがAC100V生成用、下側の縦に付いている子基板がAC100V生成用のPWM制御基板、右側のダイオードがAC100V用、下側子基板の下にある黄色い長方形と左側のコイルとフィルムコンデンサがAC100V平滑用、右のトランスと右上のFETが昇圧回路、左上がUSB(5V出力)です。

AC100Vコンセントの裏側です。特にセンサー等は付いていないので、外側で電源タップを使用して分岐しても問題ないと思います。

基板の拡大写真です。

AC100V生成に使うFETには、CS40N25という物が使われています。FQA40N25(Nch、250V、40A、70mΩ)のセカンドソースもしくはコピー品だと思われます。

長方形の黄色い素子は、コンデンサ、0.1uF、275Vです。正弦波出力のノイズ用(平滑化用)として使われているのだと思います。
縦に付いている子基板に2つ載っているinfineon IR2110S は、FET駆動用のゲートドライバIC です。

整流ダイオードです。

子基板に載っているinfineon IR2110S の近くに TEXAS LM393が載っています。
デュアル差動コンパレータです。

子基板裏側には、Microchip PIC16F716が載っています。
秋月でも売ってるマイコンです。

何に使っているのかよく分からないのが、このレギュレーター UTC LM7812L 。
入力最大35V、出力は12V、1Aです。正確な12Vを作るにしても1Aだと少なすぎますし、コンパレーターの基準電圧用等だと大きすぎます。

基板反対側の拡大写真です。左下は昇圧用のFET、真ん中が制御用子基板、右下はUSB5V出力用の回路です。

子基板右側にはSTMicro SG3525AP というPWMコントローラー、 左側には、ELAN MICROELECTRONICS EM78P372N という8bitマイコンが搭載されています。

昇圧用FETには、CS180N06という物が使われています。180N06(Nch、60V、180A、2.8mΩ)のセカンドソースもしくはコピー品だと思われます。

USB(5V出力)の回路です。

基板裏面です。AC分離されています。AC回路の安全性も少し配慮されています。 FET制御周りはAC/DC混在していますが、これで仕方ないのかなと思えます。





A BESTEK MRZ3010HU


外観です。ケースは樹脂です。

冷却ファンの通風口です。大きめのファンですが、カラカラ音が少し気になります。

AC100Vコネクタ、LEDランプ、USB5Vコネクタです。

基板です。左がAC100Vの平滑用コイルとXコンデンサ、下がAC100V生成、真ん中上側が昇圧回路、左上側がUSB(5V出力)です。

反対側から見た基板です。

AC100V生成のFETには、JCS18N50FHという物が使われています。18N50(Nch、500V、18A、265mΩ)のセカンドソースもしくはコピー品だと思われます。

AC100V生成部分に使う整流ダイオードです。ES5Gという物が使われています。400V、5A、Vf=1.3Vのようです。

正弦波の平滑化に使われるXコンデンサとコイルです。Xコンデンサは47uFと非常に大きいのが使われています。恐らくこの定数が大きすぎて、正弦波がうまく平滑できずにノイズが大きいのだと思われます。

このフィルムコンデンサも正弦波の平滑に使っているようです。

AC100V生成の制御基板です。右上に付いている黄色い部品は、タンタルコンデンサのようです。容量は47uF。ノイズが取れなくて苦肉の策で付けたんでしょうが、容量が大きすぎるし車載に使ってはいけません。BESTEKの修正正弦波のコンバーターは優秀な作りでしたが、このコンバーターは回路定数が大きければ良いという思い込みが所々で見られ、設計レベルが低くて危険だと思います。

基板裏面には、STM32G030F6P6という64MHz駆動のArm Cortex-M0+マイコンが搭載されています。

左上側がUSB 5V出力用の回路です。

子基板右側の Techcode TD1730 というのがPWMコントローラー、その下にコントローラーの駆動用と思われる5V100mA出力のレギュレータ、 左側はNch FETのようです。

コネクタが付いている小さな子基板は、FAN制御用です。

昇圧用のFETです。RU6199Rという物が使用されています。Nch 60V、200A、8mΩのようです。

基板裏面です。AC分離されています。

残念なのがこの部分。下側真ん中にL時の切り欠きがあります。ここに金属シールドが嵌まるのですが、上側のパターンとの距離に余裕がなく、接触しそうな感じです。恐らく環境試験等をやらずに、机上で動いたで製品化したのかもしれません。



B LST 300W


外観です。ケースは樹脂製で、小型コンパクトです。電源タップのように上側にAC100Vコネクタがあります。

USB 5V出力コネクタです。

シガーソケットからの入力電圧が表示できます。

基板です。左側の大きなトランスと左上が昇圧回路、下側がAC100V生成回路、真ん中右側がAC100V出力と平滑回路、右上がUSB(5V出力)です。

AC100V生成部分です。プレートに4つ付いているのが生成用FET、下側に付いている子基板が制御用です。
子基板を外さないとFETが確認できない構造のため、詳細不明です。

AC100V生成に使う整流ダイオードです。

制御用子基板です。

昇圧側です。こちらも子基板を外さないと昇圧用FETが確認できません。

FAIRCHILDのKA7500BというSMPSコントローラーが使用されています。

で、この製品の強引なレイアウトがここ。 AC100V平滑用のコイルにAC100Vの端子が触れていますが、反対側もFETを冷却するプレートと接触しています。樹脂シートを挟んで強引に絶縁化しています。LSTの製品は修正正弦波のインバーターもそうでしたが、荒っぽく大胆な設計が気になります。車両火災が起きなければよいのですが。

USB 5V出力用の回路です。

基板裏面です。意外にもAC分離はきちんとされています。はんだは少し少ない気がします。

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