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No.0018 2023.7.23
2024.3.3 追記



FETの選び方









□ 1.FETの呼び方

はじめに、FETはエフイーティーと呼びます。電機分野に詳しくない文系の方で「ふぇっと」と呼ぶ人がいますが、少なくとも日本では間違いです。FETは日本で古くから研究され、日本がグローバルスタンダードです。昭和の頃より研究に深く携わっている大学教授や東芝などのメーカーでもFETは「エフイーティー」と呼びます。ちなみにMOSFETは、「モスエフイーティー」です。「エムオーエスエフイーティー」ではありません。これを間違えると恥ずかしいので、気を付けましょう。NECをネックと呼ぶZ世代並みに恥ずかしいのです。時々「英語では〜」と反論する人がいますが、ここは日本国であり我々は日本人です。和製英語を一切使わないのであればそれも生き方ですが、帝国軍人でもない限り和製英語を使わない人なんていないはずです。

FETの正式名称は、電界効果トランジスタであり、「トランジスタ」と付きます。しかし電流増幅の普通のトランジスタと区別するため、トランジスタとは呼ばずFETと呼びます。FETを説明するのに「電界効果トランジスタ」と仕様書や稟議書、技術資料等に正式名称を書くのは間違いで紛らわしいので気を付けましょう。 FETの正式名称は電界効果トランジスタですと正論を振りかざしても、誰も聞く耳を持たないでしょう。FETはFET、トランジスタはトランジスタであり、まったくの別物です。

ちなみにIGBTやGaN FETなどの研究開発も日本が最先端です。日本のFETの研究開発がいかに優れているのかの報道記事を目にすることはほとんどありませんが、それは日本が最先端あることを快く思わない人たちが多いからでしょう。



□ 2.FETの使い方

FETは、電気をON/OFFするスイッチとして使用します。
FETを説明している資料や本ではトランジスタのように「増幅」という言葉が出てくる場合がありますが、FETを研究開発するのではなく「使う」のであれば無視してかまいません。

□ 3.FETの故障モード

残念ながらFETはショートモードで破壊します。 具体的にはドレインソース間が常にONとなってしまいます。 ショートモードの起きにくいFETは探せばありますが、絶対にショートモードの起きないFETは無いと考えたほうがいいでしょう。

故障モードに対する対策としては、以下のものがあります。


(1) 他の素子を使用する

トランジスタやマグネットリレーを使用します。 大電流が流せる物として、電力用トランジスタ(パワートランジスタ)がありますが、損失が大きく膨大な発熱を出します。



他に大電流が流せる物として、オムロン等のマグネットリレーがありますが、高速でON/OFFのスイッチングができません。物理的な接点があるため物や使い方によってはまれに溶着等によるショートモード破壊もありますが、通常は溶着等も考慮された設計になっており接点抵抗の増加による導通不良がほとんどです。




(2) ショートモードを考慮した設計にする

一例としてエアバッグECUについて見てみましょう。エアバッグECUではエアバッグの点火にFETが使用されていますが、動作したエアバッグECUが再利用不可なのはFETがショート破壊する可能性があるからです。事故でもないのに走行中に誤ってエアバッグが開くと大変なことになります。よってエアバッグECUは、何重もの誤動作防止の仕組みが組み込まれています。

その他には 特開2009-196541 のように、FETを直列もしくは多段にしてショート等による意図しないONを防ぐ仕組み等が使用されています。

FETで使用する大元の電源供給用としてマグネットリレーを置き、FETがショートしていると判定した場合はリレーをカットオフするという仕組みも車載では一般的です。
例えばプリウス等のハイブリッド車ではIGBTが使用されていますが、高圧回路の大元には接点式のマグネットリレーが使われており、特開2011-109794 のようにリレーを多段化してうまく使う仕組み等も色々と考えられています。

FETがショートしているかどうかを判定する仕組みとしては、ドレイン電圧で判定する、ドレイン側に電流検出回路を追加するなどの方法が一般的です。



□ 4.FETのメリット

FETのメリットとしては、高速にスイッチングできて、発熱が小さく損失が小さいという点があります。 例えばDCDCコンバータの損失が飛躍的に小さくなったのは、スイッチング素子としてパワートランジスタからFETに切り替わったためです。



□ 5.FETの選び方

(1) Pch と Nch のどちらを使うか

どういう回路でFETを使うか、になります。

Nch は簡単な回路で動作し、コンプメンタリであってもNchのほうがオン抵抗(Ron)が小さく、実損失も10倍以上小さいのですが、基本的にローサイドドライブ(ローサイド駆動、シンク駆動)でしか動作できません。

Pch はハイサイドドライブ(ハイサイド駆動、ソース駆動)で動作できますが、信頼性の観点で不利になり、かつ駆動回路が複雑になります。残念ながらPNPトランジスタのように簡単には使えません。NchとコンプメンタリであってもPchのほうがオン抵抗(Ron)が大きく、実損失も大きいのが特徴です。

以上のことから、まずはNch FETで回路が作れないかを検討し、駄目ならPch FETを使用することを検討します。
Pch FETを使わなければいけない場合、PNPトランジスタでは駄目なのかを検討し、電力や発熱の観点から最終的にPch FETということになります。


(2) 入手性

FETの価格は、どのメーカーも似たようなものです。重要なのは入手性です。メーカーは沢山買ってくれるところに沢山売ります。しかし生産できる量には限界があるため、手間賃にもならない数量しか買ってくれないお客さんや、クレーマーで品質コストが無駄に掛かるお客さんには部品を売ってくれません。日本は共産主義国家ではないので、皆に等しく商品を分配する義務はないのです。

またFETは技術開発の進歩が速い分野であり、21世紀になってからはより良いFETを生産するために設備投資額も加速的に増えています。結果的に古いFETは廃番になりやすいため、置き換えがしやすいようにパッケージの汎用性等も考慮する必要があります。


(3) 特性

データシートで、ドレインソース間電圧の耐圧(Vds)、ドレイン電圧(Id)、オン時のドレインソース間の抵抗(Ron)、ゲート電圧の耐圧(Vgs)などを確認します。
高速でスイッチングをさせる場合は、それぞれの端子間の寄生容量等も考慮します。
FETの発熱は実際に動かして測温しないと分からない部分ですので、特に海外メーカーのFETを使用する場合はデータシートを信じないで実際に動かして確認します。








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