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No.2021 2016.11.26




コンチネンタルのレーザーレーダーを調べてみた





コンチネンタルのレーザーレーダーユニットが借用できましたので、どんな感じか調べてみました。
以下のシステムに使われているユニットです。

 ・ホンダ シティブレーキアクティブシステム
 ・スズキ レーダー ブレーキ サポート
 ・マツダ スマートシティブレーキサポート

CANメッセージ対応はメーカーごとに異なると思いますし、車重や取付け位置の差等も含む細かな味付けは車種ごとに調整されていると思いますが、基本的にハードウェアは同一であると思われます。少なくとも外観は一緒です。
今回は、ホンダ シティブレーキアクティブシステムを基に調べてみました。



□1.主な仕様

最大出力(平均):45mW
パルス持続時間: 33ns
波長: 905nm
発散角(水平×垂直): 28°×12°

波長は905nmですので近赤外線(IR-A)が用いられています。


□2.外観

品番などの情報はすべて樹脂ケースに直接書き込まれています。
定番はラベル貼り付けですが、ラベルは一切ありません。
インクではなく、レーザー刻印のようです。
製造はドイツ製で、独特な質感の樹脂です。メルセデスやBMW搭載のECU等でも、この質感の樹脂が昔から使われています。
ぼかしの部分には、製造番号と思われるものが刻印されています。





受光部とレーザー出力部に、それぞれレンズがはめ込まれています。
?の部分は何かのセンサーだと思っていましたが、実際にはただの蓋でした。
蓋部分の真下の基板上には可変抵抗ツマミのようなものが実装されています。
恐らくレーザー出力の調整用であると思われます。





ピン配列は、電源とCANの4本のみで解決しています。
すべての情報のやり取りはCANで完結し、じか線は1本もありません。





レーザー出力部のレンズは以下のような構造になっています。
レンズは、レーザー出力の光を拡散させるために用いられます。
球状ではなくギザギザの構造にすることによって、横方向の位置特定を容易にしているのだと思います。
例えるならテレビのカラーバーを景色に重畳させるようなイメージでしょうか。
裏側は横に溝が掘られており、横方向のみではなく縦方向も測距ができる2次元システムなのかもしれません。
レンズは精度や品質が高く作られているため、製造原価が高そうな気がします。




発光素子は、LEDのようです。内部にセラコンのような物が内蔵されています。セラコンのような物は、発光素子とは異なるようです。
レーザーというよりは、赤外線LEDをフラッシュのように点滅させて、
受光センサーでそのフラッシュが対象物に反射して帰って来るまでの時間を測定しているようです。





受光部レンズです。
樹脂ブラケットを介して、センサ基板と勘合する構造です。
このような仕組みの場合はレンズとセンサとの個体差のずれが問題になるのですが、
製造時に微調整する工程を入れて何とかしてる感じでしょうか。






受光部レンズ裏側のセンサ部です。
それぞれのレンズにセンサがあるため、レンズの特性にもよりますがステレオで物体距離が検出可能です。
左右対称で1個ずつ付いているのかと思いましたが、運転席側(右側)にセンサが2つ付いています。
レンズに対して2つ並べることでレンズの領域を最大限使う仕組みでしょうか。
レンズ構造で何とかなりそうな気がしますが、レンズ開発のリソースが無くて2つ使った感じでしょうか。
動作には影響ないのでしょうが、センサ表面の曇り?のようなものが気になりました。



センサ基板裏面には、センサから得られたモノクロビットマップを処理するようなドライバチップが見られます。
(借り物ですので、これ以上は分解して確認することができません。)





前後してしまいましたが、レーザーレーダーユニットの内部です。
極めてシンプルな構造です。
この製品はケースの結合や基板の固定など、すべて樹脂爪によって勘合および固定されています。
ネジは1本も使われていません。
製品のコスト削減技術は日本の十八番でしたが、今や海外も同じレベルです。
(転職された日本人技術者が設計に関わってるのかもしれませんが。)



基板上面の外観です



LED出力部付近に大きめのチップが搭載されています。
ST Micro社 L9884-ICJJ というチップです。
メーカーでデータシートを検索してみましたが出てこなかったので詳細不明ですが、
恐らく赤外線LEDのドライバICだと思われます。
付近の可変抵抗のような物で、パルス持続時間と出力を調整するのでしょうか?





基板裏面の外観です
かなり大きな電解コンが付いています。



メインマイコンには、NXP SPC5603BMLL4 というチップが使われています。
http://www.nxp.com/jp/pip/MPC560xB

32bitのボディ系ECU向けの統合マイコンのようです。
ボディ系なのでCANはもちろんLIN等にも対応しているアーキテクチャーようで、処理能力もそこそこありそうです。
チップは若干大きめのサイズです。
フロントガラス上部は真夏の日差しを直接受けて高温になり、
エアコンの冷気も直接受ける位置にありますので、サイズ優先でBGAタイプを選ばないのは正解だと思います。







□3.システム概要

レーザーレーダーユニットが前方との距離を測定して、クルマの走行状態等の状況を判断した上で、
VSCユニットにブレーキ命令を出す仕組みのようです。

残念ながら距離情報を出して、VSCユニット側がブレーキを掛けるかの判断をする仕組みではないようです。
何が残念かと言えば、このシステムの仕組みだと距離情報を外に出す必要がないため、
レーザーレーダーユニットの実力を色々チェックすることができません。
しかし、ホンダ純正の故障診断ユニットHDSを用いると距離が測定できるらしいので、
その仕組みを利用すれば純粋な測距の実力データが取れるかもしれません。





以下は、本機を単独で動作させたときのCANメッセージの出力状況です。
みるCANを使用して、Ackは返すようにしています。
レーザーレーダーユニット前面に障害物を置いても、メッセージのデータに変化はありませんでした。
他の機器からのメッセージが受信できないため動作しない仕様なのか、 元々メッセージ上に距離のデータがないのかもしれません。速度信号を入れてみれば、ブレーキ指示情報に割り当てられたビットは変化するかもしれません。
ホンダ純正の故障診断ユニットHDSのテストモードでは、恐らく拡張CANで通信するため本機の動作確認専用のCAN IDが割り当てられて、要求IDに応じて距離データの含まれる応答メッセージが送られる制御だと思われます。

受信できたCANメッセージのうち、1D8は送信周期が約10msと短いのでブレーキ指示情報、597は約1000msと間隔が大きくメッセージごとに内容が切り替わっているようですので自己ダイアグやメーター表示等の情報だと思われます。車両で実際にモニタリングすれば詳しく解析できるのですが、実車を借りることができなかったため、ここまでとなります。


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