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No.2010 2016.5.1
2016.12.2 追記
2017.4.30 グリース塗布の誤記修正
2020.10.31 塗装について追記


ブレーキキャリパーの構造とオーバーホール







□1.ブレーキキャリパーの種類

ブレーキキャリパーには、対向式とフローティング式(浮動式、片側式)があります。
フローティング式は一般的な形式で、ほとんどのクルマで採用されています。 ブレーキパッドを抑えるピストンとフレーム部分はスライドピンを介して浮いている状態です。 よくある不具合として、スライドピンのグリースが切れて錆が発生し、摩擦抵抗が高くなってスムーズに横移動できなくなり、ブレーキの効きが悪くなったりブレーキパッドのピストン側のみ減っていくことがあります。いわゆる片効きという症状です。 この形式の利点は、ピストンの数が少なく済み、キャリパーが小型化できることです。
対向式はフルカウルのバイクや高性能スポーツ車などで使われていました。 しかしピストンが多数ある関係上、キャリパーの容積が大きくなってしまうため、 高性能スポーツ車などでもフローティング式が使われる場合もあります。





□2.キャリパーで使うグリースの種類

ブレーキキャリパーのオーバーホールキットを購入すると、 ピンク色のラバーグリースとオレンジ色の鳴き止め用グリースが付いてきます。 時々、透明のグリースも付属することがあります。この透明な物は耐熱シリコングリースです。 ピストンシールやピストンのシリンダーと触れる部分に塗布します。 通常はラバーグリスを用いるのですが、最近ではこのような指定の車種が増えているようです。 ホンダの整備書を見ると、少なくとも2000代半ばにはシリコングリース信越化学KS-62Mを使用するように指定されています。 一方、トヨタの修理書を確認すると最近の車種でもラバーグリスを使用するように指定されています。 メーカーによって方針が異なるようで、有効性は不明です。 シリコングリースは25℃の通常の気温でも経年変化が早いため、 長期的にメンテナンスされないキャリパーピストンには向かないような気がします。 信越化学KS-62Mの仕様は、最大250℃、ちょう度229、体積抵抗率56TΩ・mとなっています。



ラバーグリース
純正トヨタ ラバーグリース 08887-01206 入数:100g×1個

参考価格:800円
ワコーズ RG-T ラバーグリース ブレーキ用ラバーグリース 100g V241 [HTRC3]

参考価格:1300円
PITWORK ラバーグリース カラー:桃赤色 KRE00-00010 100g×1個

参考価格:800円
NISSAN 日産純正 グリース ラバーグリース KRE00-00010

参考価格:800円


鳴き止め用耐熱グリース
【ディスクパッド専用】 ニチモリ ブレーキグリース N-140 耐熱グリース

参考価格:2000円
ワコーズ BPR ブレーキプロテクター チューブ 耐熱・耐久ディスクパッドグリース 100g V160

参考価格:4000円
キタコ(KITACO) ブレーキディスクパッドグリス 5G KCON 0900-969-00190

参考価格:400円
【コーザイ】ディスクパット用耐熱グリース100g

参考価格:3000円


耐熱シリコーングリース(250℃)
ワコーズ SSG スーパーシリコーングリース チューブ 耐熱シリコーンブレーキグリース 100g V251

参考価格:3100円
KURE [ 呉工業 ] シリコングリースメイト ペースト (50g) グリース [ 品番 ] 1067 [HTRC2.1]

参考価格:800円




□3.オーバーホールの準備

ブレーキキャリパーのオーバーホールには、以下の部品が必要です。

・ピストンシール
・ピストンのダストシール
・スライドピンのダストシール
・ブレーキフルード 1L以上(通常はDOT4)
・ラバーグリース
・鳴き止め用耐熱グリース
・ロックピンのクリアランス用のゴム(装着されている場合のみ)
・耐熱シリコングリース(整備書で指定されている場合のみ)


ブレーキキャリパーのオーバーホールには、以下の工具や機器が必要です。

・キャリパーの取り付けボルトを開け閉めするメガネレンチ
 (ソケットとスピンナーハンドルでも可)
・ブリーダーボルトを開け閉めするメガネレンチ
 (ソケットやスパナは不可)
・精密のマイナスドライバーなど
 (ピストンシール等を取るときに使います)

・水道と散水ホース
 (キャリパー等の部品を洗うのに使います)
・中性洗剤
 (キャリパー等の部品を洗うのに使います)
・たわし等のブラシ
 (キャリパー等の部品を洗うのに使います)
・エアーコンプレッサー
・エアーダスター
・エアーホース
・木材等のスペーサー(ウェス等でも可)

・ラインストッパー
・エアー抜きで使用する耐油ホース 0.5m程度
 (通常は、内径4mm程度のホースを使います)
・廃油を入れる容器
 (空のウォッシャー液の容器、2Lのペットボトルなど)
・廃油トレー
 (ブレーキホースを外すときに流れ出るフルードを受け止める)
・水を入れたじょうろ
 (ブレーキフルードがボディ等に付着したとき、
  洗い流すために使います。)
・ウェス
 (ブレーキ液を拭いたり、汚れを拭いたりします)




□4.オーバーホールの手順

1) キャリパーを留めている2本のボルトを緩めます。
通常はM14かM17のボルトが使用されています。キツく締まっているので、ラチェットを使うとギヤが壊れてしまいます。 スピンナーハンドルと6角のソケットの組み合わせを使うか、めがねレンチで緩めます。12角のソケットを使うと、ナメてしまう場合があります。 緩めるだけで、まだ取り外してはいけません。緩め過ぎた場合は、指で強く回して回らなくなるまで締めます。
キャリパーの構造によりますが、スライドピンやロックピンは緩めたり外す必要がありません。 スライドピンはクリアランス用のゴムが付いていないほうを指し、ロックピンはクリアランス用のゴムが付いているほうを指します。 オーバーホール時は、このクリアランス用ゴムも交換します。 スライドピンやロックピンを外してしまった場合には、逆に取り付けないように気をつけます。逆に取り付けると、ブレーキを踏んだときに、カタカタと鳴る原因になります。


2) プレーキホースのバンジョーボルトを外します。
ブレーキラインからブレーキオイルが流出してエアーが入り込むのを防ぐため、 ラインストッパーなどを使用して流出を止めます。銅ワッシャーは再利用しませんが、念のため捨てずに取っておきます。
ブレーキ液がボディの塗装部分等に付いたときには、すぐに水で洗い流します。放置しておくと、塗装が剥がれてしまいます。


    
(STRAIGHT/ストレート) ラインストッパーセット 5ピース 19-748

参考価格:1600円
デイトナ(DAYTONA) ブレーキラインストッパー 91509

参考価格:1800円




3) キャリパーを留めている2本のボルトを外します。
キャリパーをナックルやブレーキディスクから外します。






4) ブレーキパッドを外します。
ブレーキパットの両端に付いている金具も外します。 この金具をパッドクリップ(パッドサポート)と呼びます。 ブレーキパッドの裏面に付いているステンレスのプレートと縞々に穴が空いているプレートも外します。 これらの板をシムプレート(アンチスキールシム)と呼びます。





5) キャリパーからマウンティングブラケット(シリンダーマウンティング)を外します。 ロックピンやスライドピンは取り付けたまま、ダストシールも取り付けたまま引き抜きます。






6) ダストカバーの留めピンを外します。
径が大きいのですがCリング構造になっています。 精密のマイナスドライバ−等で外します。 ダストカバーも外れるようでしたら外します。 圧入型の場合は、ピストンを抜いてから外します。




7) エアーコンプレッサーとエアーダスターを使用して、ピストンを押し出します。 キャリパー内のブレーキオイルは予め抜いておきます。 ブレーキオイルの飛散によるクルマの塗装剥がれ等を防ぐために、水で内部をすすいでおきます。 勢いよくピストンが飛び出てくるため、木材や廃棄するブレーキパッド等をストッパーとして使用します。ウェス等を丸めて使っても問題ありません。 エアーダスターとキャリパーの隙間から空気が漏れ出るため、穴の周囲をウエス等で隙間を埋めて垂直に押しつけるようにします。





8) ピストンのダストシールを取り外します。
すでに外してある場合は、次の手順に進みます。引っ張って取れない場合は、精密マイナスドライバー等で外します。 ピストンシールも同様に外します。ブリーダーキャップを外して、ブリーダーボルトも外します。通常はM6かM8です。





9) バラバラにした部品を水洗いします。
たわし等のブラシを使って汚れを落とします。 汚れが酷い場合は、中性洗剤を使います。 汚れが残っている場合は、ブレーキオイルをウェスに付けて擦ると落ちます。





10) ピストンやシリンダーに錆がある場合は、その部分のみを耐水ペーパー等を使用して落とします。 ピストンやシリンダー全体を磨いたりすると、ピストン外径が小さくなったりシリンダー外径が大きくなったり、 歪みが発生してしまいます。 凸錆のみ落とします。スクレーパーやマイナスドライバーを使うと、その部分のみが削り取れます。 ダストシールをはめ込む凹部分は、凸錆があるとそこの隙間から水分が混入してきます。その部分の錆は念入りに落とします。 汚れは、ブレーキオイルで落ちます。プレーキオイルを使用した後は、水で洗い、エアーで水分を飛ばします。





11) エアーダスターで水滴を飛ばします。
特にシリンダー内、ブリーダーネジ付近、スライダー穴などに水分が残らないようにします。





12) キャリパーやマウンティングブラケットを耐熱塗料等で塗装をする場合は、マスキングテープ等でマスキングします。 シリンダーやスライダー、パッドが当たる部分に塗料が掛からないようにします。 耐熱塗料の塗装は薄めに行います。ボディ等のウレタン塗装のように厚めに塗ると、熱を掛けたときに気泡ができてしまいます。厚みを出したい場合は、薄く塗装→150℃で焼く→薄く塗装→150℃で焼く・・・を繰り返す必要があります。錆やグリースなどの油分が残っていると、塗膜がうまくできません。



13) 塗料の取扱説明書に書かれている時間乾燥させます。
耐熱塗料は、150℃程度以上の熱が入らないと完全に乾燥しません。以後、クルマに取り付けるまで、 ぶつけて塗料が剥がれないように慎重に取り扱います。
オーブンを使うときは150℃で1時間焼きます。オーブントースターだと温度調整もできず15分しか使えませんが、コンベクションオーブンだと細かい温度調整ができ1時間使えます。写真は、アイリスオーヤマ PFC-D15A です。



14) マスキングテープを外し、キャリパーを組み上げて行きます。
まずはシリンダー内にラバーグリースを薄く塗ります。シリコングリースが付属している場合はそれを使います。 少なくともトヨタ系はラバーグリースを使ったほうが良いかもしれません。




15) ピストンシール全体にラバーグリースを塗って、シリンダー内の凹の溝に入れます。指を使って入れます。 シリコングリースが付属している場合はそれを使います。 シールの内側の面をよく見るとわずかにテーパー状となっているので、突き出ているほうを内側にして入れます。




16) ピストンシールが当たるビストン円周部(黄緑)とダストブーツが収まる凹部分(ピンク)にラバーグリースを塗ります。 シリコングリースが付属している場合は、ビストン円周部にそれを使います。 ダストブーツがはまる溝には、必ずラバーグリースを使います。 錆を削った凹みの箇所は、隙間とならないように多めにグリースを塗ります。 ピストンの内側(水色)には、錆を防止するためにも鳴き止め用の耐熱グリースを塗ります。




17) ピストンにダストブーツを取り付けます。ダストブーツの内側にラバーグリースをたっぷりと塗ります。 蛇腹部分の溝が埋まるくらい、盛りつけるように塗ります。




18) ダストブーツのキャリパー側の溝までの幅が短い場合は、ダストブーツをピストンの奥側にスライドさせ、 キャリパー側を先に取り付けます。その後、ピストンを入れてピストン側の溝に取り付けます。 キャリパー側の溝までの幅が広い場合は、そのままピストンを入れればキャリパー側の溝にもはまります。
ダストブーツが圧入タイプの場合は、大きなソケット等を介してゴムハンマー等で叩いて圧入します。このときピストンは叩かないようにします。
共通の注意事項は、ダストブーツをピストンから切り離して単独で取り付けてしまうと、 後からダストブーツにピストンを通そうとしてもうまくいかなくなることです。 この場合、エンジンのピストンリングコンプレッサーのようなブレーキピストン専用のガイドSSTなどが必要になると思います。マイナスドライバー等でこじ開けると、ダストブーツが傷みます。     




19) ダストカバーに留めピンを付けます。指で押し込んで付けます。
圧入型の場合は、この工程を省略します。




20) スライドピンやロックピンのダストブーツの内側にラバーグリースをたっぷりと塗ります。




21) スライドピンやロックピンに、ダストブーツを取り付けます。 ロックピンのクリアランス用のゴムも、ラバーグリースを全体に付けて交換します。 クリアランス用のゴムの取り外しには、精密マイナスドライバー等を使用します。 通常は、洗浄前に外しておきます。




22) スライドピンやロックピンに、ラバーグリースを塗ります。
シリコングリースが付属している場合はそれを使います。




23) マウンティングブラケット(シリンダーマウンティング)をキャリパーに取り付けます。




24) マウンティングブラケット(シリンダーマウンティング)に付いていた、 ブレーキパッドと当たる金具、パッドクリップ(パッドサポート)を取り付けます。 取り付ける前に、鳴き止め用の耐熱グリース(オレンジ色のグリース)をブラケットと当たる面に塗ります。


25) ブレーキパッドを組み立てます。
縞々のシムプレートの両面に鳴き止め用の耐熱グリース(オレンジ色のグリース)を塗ります。 ブレーキパッドの裏面に縞々のシムプレートを置き、その上にステンレスのシムプレートを取り付けます。 ステンレスのシムプレートに固定用の突起があるので、それをプレーキパッドに噛ませます。




26) 組み立てたブレーキパッドを、マウンティングブラケット(シリンダーマウンティング)に組み付けます。 組み付ける前に、パッドと接触する面のキャリパーやパッドクリップ(パッドサポート)に鳴き止め用の耐熱グリースを塗ります。




27) ブリーダーボルトを取り付けます。取り付け前にOリングを交換します。 オーバーホールキットに付属していない場合は、今まで付いていたものを使い続けます。 水で洗った場合は、Oリングの溝や内部に水が入っている場合があるので、エアーで十分に飛ばしておきます。




28) キャリパーをクルマに取り付けます。ボルトは本締めします。 締め付けトルクは、通常 7kgm (70Nm)〜11kgm (110Nm) 程度です。 キャリパーに1mm以下の遊びがあると思いますが、ブレーキディスクの外側になるようにキャリパーを引っ張りながらボルトを締めて行きます。通常はありえませんが、パッドの摩耗部分がディスクからはみ出す場合は、逆に内側に押しつけるようにして締め付けます。パッドとディスクがツライチより少し内側になるのが最も良い状態です。


29) ブレーキホースを取り付けます。バンジョーボルトは今まで付いていたものを使用し、 銅ワッシャーは新品を使用します。締め付けトルクは、通常 3.0kgm (30Nm)〜3.5kgm (35Nm) 程度です。 通常ブレーキホース先端の金属部分には、ボルトと一緒に回らないように固定用の突起ストッパーがあるので、 その部分を合わせます。
ラインストッパーを外すと、すぐにブレーキフルードが流れ出てきます。素早く指を動かして仮組みをし、最小限の流出となるようにします。
ブレーキ液がボディの塗装部分に付いたときには、すぐに水で洗い流します。 放置しておくと、塗装が剥がれてしまいます。




30) これからの作業には、2人必要です。1人は運転席でブレーキペダルを踏む役、 もう一人はブリーダーボルトを緩み締めしたりブレーキーフルードのリザーブタンクに給油する役をします。 このとき、クルマはジャッキアップしている状態ですので、クルマに乗り降りするときには慎重に行います。


31) メガネレンチをブリーダーボルトに付けます。次にブリーダーボルトに透明の耐油ホースを付けます。 ピンク色の燃料ホースがオススメです。 廃油タンクには、ウォッシャー液の空容器や2Lのペットボトル等を使うのがオススメです。 リザーブタンク内のブレーキーフルードが少ない場合には給油します。 リザーブタンクのキャップは外したままにしておきます。




32) ブリーダーボルトを緩め、ブレーキペダルを10回程度踏みます。
ペダルを踏んだり離したりするときは、やさしくゆっくりと行います。


33) ブリーダーボルトを締め、ブレーキペダルを3回程度、強く奥まで踏みます。 踏み込むときは強く踏む必要があるため、全体重を載せるつもりで行います。 ペダルを踏んだり離したりするときは、ゆっくりと行います。 踏んだままの状態でブリーダーボルトを緩め、すぐに締めます。 するとブレーキフルードと一緒に空気の泡が出てきます。 これを4〜5回行います。




34) 小さな気泡などが出てこなくなり、ブレーキフルードしか出てこない状況が続くようになったら、 締めて終わりにします。締め付けトルクは、通常 0.8kgm (8Nm)〜1.1kgm (11Nm) 程度です。 リザーブタンク内のブレーキーフルードが少ない場合には給油します。 このときの給油は、ブレーキパッドの残量を考慮する必要があります。 新品のパッドを装着している場合はMAXラインまで、 パッド残量が少ない場合にはその割合に比例した量となるようにMINライン以上の量となるように調整します。


35) 以上の作業をフロント左右、リヤ左右の合計4回行います。リヤがドラムブレーキ(ワイヤー式)の場合は、フロントのみ行います。ただしドラムブレーキで油圧式の場合は、オーバーホールをしていなくてもエア抜きをしておきます。     



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