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No.0011 2022.8.24




抵抗の使い方





抵抗は単純で基本的な電子部品ですが、電気設計者であっても基本的なことも知らずに何となく使っている人を見かけます。基本的なことを簡単にまとめてみました。



□ 1.抵抗とは?

抵抗とは、電気の流れを制限する部品です。
オームの法則で言えば、V=RIのR(レジスタンス)です。
インピーダンスで言えば、





のRです。
単位はオームと呼び、Ωと書きます。
電圧が1V一定のとき、電流が1A流れるときの抵抗値が1Ωです。
流れる電流を0.1Aにしたいときは10Ωに増やし、
10Aにしたいときは0.1Ωに減らします。

高調波では寄生容量や寄生インダクタンスの影響を受けますが、 直流でも交流でも過度特性は関係なく、単純に電気の流れを制限します。 回路記号は以下の2つを使います。昔はJISC 0301にてギザギザが抵抗と決められていましたが、IEC60617およびJISC 0617にて四角が抵抗と定義されました。接点、ダイオード、トランジスタ、オペアンプや論理回路は世界的にも旧規格の記号が主流ですが、コイルやインダクタは新規格の記号が主流です。抵抗はメーカーによって新旧バラバラです。







□ 2.制限抵抗

抵抗とは、電気の流れを制限するだけの簡単な部品です。
それ以外何もできません。

ですので、大きな1つめの目的は「電流制限」として使用します。使い方として電流を制限するので「制限抵抗」とも呼ばれます。

具体的な使い方としては、例えばLEDなどの負荷に流れる電流を制限するために使用します。例えば以下の単純なLED回路を考えたとき、もし抵抗がなければLEDの内部抵抗は0.02Ωくらいです。LEDの順方向電圧を3VとしたときLEDに流れる電流は、(5V-3V)÷0.02Ω=100A となり、一瞬で壊れます。LEDの定格電流を10mAとしたとき、(5V-3V)÷0.01A=200Ω の抵抗で電流の制限をすれば、正しくLEDが使用できます。






電流を制限する応用的な使い方として、プルアップ抵抗、プルダウン抵抗と呼ばれるものがあり、主に信号系の回路にて電位を安定させるために使用されます。


a) プルアップ抵抗

プルアップ=引き上げる という意味そのままで、信号のHiの電圧を作るための抵抗です。 以下のようなCMOS出力のとき、ONのときは出力側から入力側へ電気が流れ、OFFのときは入力側から出力側へ電気が流れます。電流の向きが高速で変わるため、ノイズの原因となってしまいます。




それなら入力側に電源を供給してやればいいと、抵抗を介してHiとなる電圧を掛けることにします。もし抵抗を入れないと、OFF時の経路に抵抗はFETのRon抵抗0.1Ω程度のみしかありませんので、100A程度の大電流が流れてしまいます。




「だったらON時のPchいらないよね、コスト削減になるし。」となったのが、現在の主流であるNch出力です。出力側でプルアップさせて電圧を出力させることも可能ですが、電流の向きが変わってしまうためHi-Loが頻繁に切り替わる信号用途では使いません。




プルアップ抵抗は電圧のみ使用し電流は不要なため1〜100kΩくらいの範囲で使用します。推奨値は電圧やICの内部抵抗によって異なります。例えば100MΩなどにすると、ICの内部抵抗よりも大きすぎるため、分圧されてほとんどの電位差がプルアップ抵抗で取られてしまいます。逆に100Ωにすると50mAも流れてしまうので、FETはギリギリ耐えられるかもしれませんが消費電力が大きくなってしまいます。




b) プルダウン抵抗

プルダウン=引き下げる という意味そのままで、信号のLoの電圧を作るための抵抗です。
以下のようなCMOS出力のとき、ONのときは出力側から入力側へ電気が流れます。このとき、入力側の抵抗値が高いと電気が流れにくくなってしまいます。配線が長かったり、接触抵抗があたり、平行する信号の誘導ノイズ等によって経路上のインピーダンスが高くなると、より電気が流れにくくなってしまいます。




それなら入力側でGNDに落としてやればいいと、抵抗を介してGNDに落とすことにします。もし抵抗を入れないと、ON時の経路に抵抗はFETのRon抵抗0.1Ω程度のみしかありませんので、100A程度の大電流が流れてしまいます。




しかしNch出力が主流となってプルダウンさんは不要となり、リストラされてしまいました。




しかしNch出力で超高速の信号を送ろうとするとうまくいきません。いろいろやってみた結果、ON時にHiとなる一定以下の電圧にすれば改善することが分かりました。HiかLoかはスレッショルド電圧の仕様に依存しますが、5V系で〜4.9VまではLoで、5VとなったときにHiと判定されるものは存在しません。 この問題はICの内部インピーダンス変動が大きく、かつプルアップ抵抗が小さい時に出るノイズ対策でも有効です。Hi(FET:OFF)時はまったく電気が流れませんが、Lo(FET:ON)時は急激に電流が流れてしまいます。プルダウンでHi時も電流が流れるようにしておけば、急激な電流変動が緩和できるという訳です。こうしてプルダウンさんは復活することができたのです。





c) 保護抵抗

最初に説明した制限抵抗は、LEDなどの負荷に流れる電流量を調整するための物です。応用的な使い方としてサージノイズや静電気等の影響を緩和させるために使用します。例えば以下の回路のout-in間が電線等で結線されている場合、外部から静電気やサージが掛かる場合があります。例えば1kVの静電気がin側に印加された場合、プルアップ抵抗には995V0.1Aの電流が瞬間的に流れます。信号を読み取るICの入力端子の先はFETのGATE端子ですので、瞬間的に1000Vが掛かることで一瞬で壊れます。




ですので、一般的には保護ダイオードを入れて過電圧を逃すように設計されています。このときGND側へはツェナー電圧以上となったときに短絡的に電気が流れることになり、電源側に過電圧を逃す設計の場合は電源電圧5Vと順方向電圧0.7Vの和5.7V以上の電圧が掛かったときにダイオードは短絡的な電流が流れます。




一般的にICのデータシートでは許容電流値が規定されており、想定されるサージが印加されたときに許容電流値以下となるようにします。そのための制限抵抗的な使い方が保護抵抗と呼ばれています。例えば許容電流値が20mAで1000Vのサージ電圧が掛かると想定した場合、保護抵抗は50kΩとなります。しかし50kΩにしてしまうとIC内部のFETのスイッチングが恐ろしく遅くなってしまい通信が成立しなくなります。ですので無いよりはマシだで100〜1kΩ程度にするのが普通です。1kVの静電気で100Ωのとき流れる電流は約10Aにもなりますが、このときのパルス幅は1ns程度ですのでダイオードのダメージは少なくなります。もし制限抵抗がなければ100倍の大電流が流れるためダメージが大きくなります。





□ 3.抵抗分圧

抵抗とは、電気の流れを制限するだけの簡単な部品です。
それ以外何もできません。

ですので、大きな2つめの目的は、電圧を「分圧」するのに使用します。抵抗で分圧するので「抵抗分圧」、「抵抗分割」とも呼ばれます。 レポートNo.2018 クルマの電気回路 でも紹介している通り、12V系の車載でも広く使われる考え方です。

二つの抵抗を直列につないで電気を流した時、それぞれの抵抗には同じ電流値が流れます。 これは、キルヒホッフの法則として広く知られています。オームの法則 V=RI が適用できるため、 2つの抵抗の比を変えることで、好きな電圧を取ることができます。






例えば、電圧が0〜16Vの範囲で変動する電源の状態を、3.3V系のマイコンにアナログ入力させたいとします。最大電圧16Vのとき3.3V以下の近い値となるようにします。このときの比は 12.7:3.3 となり、R1の3.85倍以上の抵抗値をR1として設定すればよいことが分かります。




販売されている抵抗は、E系列というルールで値が決まっているため、その中から選んで使うことになります。例えばR2を12kΩとしたとき、3.85倍の46.2kΩ以上であれば、最大電圧16Vのとき3.3V以下となります。E系列で最も近いのは47kΩですので、R1=47kΩ のときに入力される分圧値は3.254Vとなります。マイコンでアナログ入力をさせると3.254Vと読み込めるので何か処理をしたい場合は、抵抗の比の4.917倍させた値 3.254V × (47kΩ + 12kΩ) / 12kΩ ≒ 16V が元の電圧として処理できます。



選んだ抵抗値は、47kΩと12kΩという大きい値です。もし電圧を矩形波的に変動させ、1μs/division ぐらいの応答性を求めようとしても鈍ってしまい正しい電圧を取得することができません。R1= 47Ω、R2 = 12Ωとすれば、分圧比は同じですので上記と同じように扱うことができ、鈍ることなく正しい電圧が取得できます。しかし流れる電流が271.18mAと1000倍になってしまいます。抵抗は1/4W、1/2W といったように電力の定格が決められています。このときの各抵抗の電力値は、R1=12.745V×271.18mA ≒ 3.46W、R2=3.254V×271.18mA ≒ 0.88W となります。一般的な抵抗は1/4W程度ですので、各抵抗は過負荷で壊れてしまいます。R1は燃えるかもしれません。



それならば R1= 470Ω、R2 = 120Ωとすれば、どうでしょう。このときの各抵抗の電力値は、R1=12.745V×27.12mA ≒ 0.346W、R2=3.254V×27.12mA ≒ 0.088W となります。R1は、1/4W(0.25w)では過負荷となってしまいますが、1/2W(0.5W)を使えば定格内となります。




ここで流れる電流値の27.12mA ですが、何かを動かすために使われるのではなく、単に抵抗分圧のために消費されます。この省エネの時代において27.12mAは、かなりの無駄で大きなエネルギーです。消費電力を抑えるために抵抗値を高くすると、電圧の変動が鈍ってしまいます。求めたい応答性と消費電力、抵抗の定格値等を天秤に掛けながら、最適な抵抗値を決めます。

このように2つの抵抗値をあれこれ考えることで、目的に合った抵抗分圧をすることができます。 抵抗分圧の応用例として「シャント抵抗」というものがあります。

販売されている抵抗は、E系列というルールで値が決まっているため、その中から選んで使うことになります。例えばR2を12kΩとしたとき、3.85倍の46.2kΩ以上であれば、最大電圧16Vのとき3.3V以下となります。E系列で最も近いのは47kΩですので、R1=47kΩ のときに入力される分圧値は3.254Vとなります。マイコンでアナログ入力をさせると3.254Vと読み込めるので何か処理をしたい場合は、抵抗の比の4.917倍させた値 3.254V × (47kΩ + 12kΩ) / 12kΩ ≒ 16V が元の電圧として処理できます。









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>> No.0012 抵抗の選び方、故障モード

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